高血圧は自覚症状が少ないため、サイレントキラーと呼ばれています。普段から血圧を測る習慣がない方は、健康診断や病院の診察を受けた際に高血圧に気づく場合も多く、ショックを受ける方も少なくありません。

血圧が高いまま放置すると病気のリスクが高まるので、生活習慣を見直したり治療をしたりといった行動が大切です。

今回は血圧が高い原因と改善方法を紹介します。血圧が高いと感じている方はぜひ参考にしてください。

血圧の数値は何で決まる？

血圧とは、血液が身体を循環する際に血管にかかる圧力のことです。血圧の数値には「最高血圧（上）」と「最低血圧（下）」の2つの指数があり、これらをもとに健康状態を観察します。

最高血圧は、心臓が血液を送り出すときに収縮して、血管に強い圧力がかかっている状態の値で収縮期血圧とも呼ばれています。

一方、最低血圧とは、次に送り出す血液をためこむために心臓が拡張しているときの値で、拡張期血圧ともいいます。

血管に過度な負荷を与えないためにも、普段から血圧をコントロールすることが大切です。

血圧の高低を左右するのは、以下の要因が考えられます。

塩分摂取量
運動不足
肥満
アルコール
喫煙　など

血圧が高いとされる数値

一般的に血圧は、「最高血圧120/最低血圧80」の数値を超えると高いといえます。ただし、疾患をお持ちの方や年齢層によっても基準は異なるため、目安の1つとして以下の表を参考にしましょう。

血圧が高いとされる数値

出典：e-ヘルスネット　高血圧

正常高値血圧/高値血圧

正常高値血圧と高値血圧は、血圧がやや高めの状態です。

正常高値血圧は診察室血圧で「最高血圧120～129/最低血圧80」、家庭血圧で「最高血圧115～124/最低血圧75」に該当する方が分類されます。

高値血圧は診察室血圧で「最高血圧130～139/最低血圧80-89」、家庭血圧で「最高血圧125～134/最低血圧75-84」の方に該当する方が分類されます。

どちらも生活習慣の見直しや食事療法で一定期間様子を見るケースが多いです。

Ⅰ度高血圧

Ⅰ度高血圧に該当するのは、高血圧のリスクがある方です。レベルとしては3段階中の1であり、軽症高血圧とも呼ばれています。

診察室血圧で「最高血圧が140～159/最低血圧90～99」、家庭血圧で「最高血圧135～144/最低血圧85～89」の方がⅠ度高血圧に該当します。

生活習慣の見直しや食事療法で数ヶ月様子を見ても血圧が下がらない場合は、降圧薬が処方されることもあります。

Ⅱ度高血圧

Ⅱ度高血圧は、高血圧によるリスクが高い方です。レベルとしては3段階中の2に該当し、中等症高血圧とも呼ばれています。

診察室血圧で「最高血圧が160～179/最低血圧100～109」、家庭血圧で「最高血圧145～159/最低血圧90～99」の方がⅡ度高血圧に該当します。

食事療法で1ヶ月ほど経過を観察する場合もありますが、降圧薬による治療が必要になることもあります。

また、正常血圧〜Ⅱ度高血圧までは、血圧以外の健康リスク（糖尿病、糖質異常症、慢性腎臓病、肥満、喫煙習慣、高齢、心臓血管病の家族歴など）や高血圧性臓器障害、心血管病の有無などの評価も重要です。

これらの健康リスクなどがある人は、高血圧の危険性もさらに高くなるため、どのくらい血圧管理が必要なのか、血圧をどの程度まで下げるのかが異なります。

ご自分がどのくらい血圧を下げる必要があるのか、医療機関へ確認しましょう。

Ⅲ度高血圧

Ⅲ度高血圧は、高血圧によるリスクが非常に高い方です。レベルは3段階中の3であり、高血圧のレベルとしては一番高い状態にあります。重症高血圧と表現され、すぐにでも治療をはじめるべき段階です。

診察室血圧で「最高血圧が180以上/最低血圧が110以上」、家庭血圧で「最高血圧160以上/最低血圧100以上」の方がⅢ度高血圧に該当します。

高血圧によるリスクが高いため、降圧剤による治療が必要になることもあります。

血圧が高いときに考えられる原因

血圧が上がるのは、生活習慣が要因として考えられます。主な高血圧の原因を紹介しますので、血圧が高めの方は生活習慣を見直す参考にしてください。

塩分の多い食事

身体は、塩分の多い食事を続けていると血液中の塩分濃度を下げようとし、血液の量を増やす働きがあります。しかし、血液の量が増えると血管にかかる圧力も強くなるため、結果として血圧が高くなるといった悪循環が起こります。

また、塩分の多い食事は血管を収縮させる傾向にあり、血圧が上がる要因となります。

普段から塩分の多い食事を摂っている方は、身体のためにも減塩を心掛けましょう。

肥満/メタボリックシンドローム

肥満やメタボリックシンドロームに該当する方は、生活習慣病である高血圧になりやすい傾向にあります。

メタボリックシンドロームの基準はウエストサイズ（腹囲）が男性85cm以上、女性90cm以上です。お腹周りの脂肪が気になる方は、一度ウエストサイズを計測してみましょう。

また、下記に該当する方はウエストサイズに問題がなくてもメタボリックシンドロームに当てはまるので、健康診断の結果などを参考にしながらチェックしてみてください。

脂質：中性脂肪値150mg/dl以上か、HDLコレステロール値40mg/dl未満、またはその両方
血糖値：空腹時血糖値110mg/dl以上
血圧：収縮期血圧130mmHg以上か、拡張期血圧85mmHg以上、またはその両方

特に内臓脂肪型肥満の方は注意が必要です。脂肪組織が要因となって血圧を上げる成分が分泌されている可能性があります。

指標はあくまでも1つの参考値ですが、肥満やメタボリックシンドロームに心当たりがある方は、健康的な身体を目指して生活しましょう。

運動不足

運動不足は生活習慣病を引き起こす要因の1つです。適度な運動は血管を広げる傾向があり、血圧を下げる効果も期待できます。

運動不足は消費エネルギーも減るため、肥満やメタボリックシンドロームの要因にもなります。健康な身体を手に入れるためにも、運動を習慣化することが大切です。

飲酒や喫煙習慣

アルコールは心拍数を速くしたり、血管の収縮反応が高まったりするため、高血圧を引き起こす要因となります。飲酒習慣のある方は、血圧の上昇に注意しましょう。

また、喫煙は動脈硬化を促進する可能性があります。動脈硬化が起こり、血管が硬くなると、血液が流れる血管腔が狭くなるため、血圧にも影響を与えます。

ほかにも、喫煙によって交感神経が刺激されことで、喫煙してから15分ほどは血圧の高い状態が続きます。

飲酒や喫煙習慣のある方は、控えるようにしましょう。

精神的ストレスや寝不足

精神的なストレスや寝不足は交感神経を刺激し、血管を収縮させるため、血圧が上がります。

精神的ストレスを抱えている方や寝不足と感じている方は、できるだけリラックスできる時間を設けることが大切です。散歩やストレッチ、映画鑑賞や読書など、自分の好きなリラックス方法を見つけましょう。

年齢や個人差によって適切な睡眠時間は異なりますが、1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満といわれています。

加齢

加齢により血管の弾力性が低下して、血流が悪くなることで、血圧が高くなることもあります。

加齢による高血圧は改善が難しいですが、運動や食事で予防もできます。ウォーキングなどの有酸素運動や塩分の過剰摂取に気をつけるなど、日頃から適度な運動や栄養バランスの良い食事を心掛けましょう。

血圧が高いことを放置するリスク

高血圧は心疾患や脳疾患、腎臓疾患のリスクを高めます。高血圧は症状が少なく、自覚症状がない方も多いので、意識的な血圧管理が大切です。

血圧が高いまま放置すると、大きな病気を発症する可能性があります。高血圧の状態を放置した場合にかかり得る疾患について紹介します。

心疾患

高血圧は血管だけではなく、血液を循環させる際に心臓に負担をかけている可能性があります。

高血圧が要因となり心不全や狭心症、心筋梗塞を引き起こすケースも珍しくありません。心疾患を予防するためにも、血圧はしっかりとコントロールすることが大切です。

高血圧になっても日常では不便を感じませんが、心疾患になれば長期の治療が必要になります。健康に過ごすためにも、血圧が高い方はきちんと治療をしましょう。

脳疾患

高血圧の状態が続き、動脈硬化を引き起こすと、脳疾患のリスクが高まります。

高血圧により血管にかかる負荷が強くなると、脳の細かい血管が切れてしまう可能性があります。

一度切れてしまった細胞は元に戻りません。人によっては後遺症が残ることもあるので、血圧管理はしっかり行うようにしましょう。

腎臓疾患

高血圧により腎臓の血管が傷つくと、腎臓疾患のリスクが高まります。高血圧の方は、慢性腎不全や腎臓機能の低下に注意しましょう。

腎臓は沈黙の臓器とも呼ばれ、腎疾患を患っても自覚症状がない方も多いです。気づいた頃に大きな病気に発展しているケースもあります。

腎臓をはじめ、臓器を労わるためにも高血圧はなるべく早く治療しましょう。

高血圧の改善方法

高血圧を改善するために意識したい生活習慣を紹介します。血圧を正常に保つためにも、以下の点をチェックしましょう。

塩分を控えた食事

塩分の多い食事は、高血圧の要因となります。醤油やケチャップ、ソースなどの塩分の多い調味料の使用は控えましょう。

麺類を食べる際は汁を残し、漬物など塩味の強いおかずは極力避けるようにしてください。普段から薄味を心掛け、塩分を控えた食事を摂りましょう。

適度な運動

適度な運動は、高血圧の予防や改善効果に期待ができます。定期的に運動を行い、1回の運動は30分以上を心掛けてください。可能であれば毎日運動しましょう。

運動は、中度～強度の有酸素運動が望ましいです。速めのウォーキング、ステップ運動、ランニングなどをしながら、高血圧の改善や健康維持に努めてください。

運動療法は、II度以下の高血圧で脳血管疾患や心疾患のない人が対象です。これらの疾患による合併症リスクがある場合は、事前に医学的検査を行う必要があります。

また、III度以上の高血圧の方は血圧を下げることを優先し、運動開始は降圧後が良いとされています。

合併症リスクのある方やIII度以上の高血圧の方は、運動を行う前に医療機関へ相談しましょう。

減量する

肥満やメタボリックシンドロームは、高血圧のリスクを高めます。健康を維持するためにも、適正体重を目指して減量しましょう。

食事の内容や量を見直し、消費カロリーを増やすために運動を行ってください。基礎代謝を高めたい方は筋肉を鍛えると良いです。

過度な食事制限や無理なダイエットは、リバウンドや健康へ影響を与える可能性があるのでおすすめできません。無理なく続けられる減量方法を見つけましょう。

アルコールやタバコの摂取量を減らす

飲酒習慣や喫煙習慣のある方は、摂取量を減らす努力をしましょう。アルコールは適度な量に抑え、習慣的に飲酒している方は休肝日を設けましょう。

タバコに関しては禁煙が望ましいです。タバコを辞めたいと考えている方は、禁煙グッズなどを活用してみましょう。

まとめ

高血圧は症状が少ないため、血圧が上がっていることに気づかない方も多いです。

しかし、高血圧を放置すると動脈硬化を招き、さまざまな病気のリスクを高めるので、普段からしっかりと血圧をチェックしましょう。

塩分の少ない食事や肥満の予防、運動は血圧を正常に保つために大切なポイントです。健康を維持するためにも、生活習慣を見直しましょう。

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【監修者情報】

監修者_川上洋平
かわかみ整形外科クリニック
院長・医学博士：川上洋平

神戸大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学に留学し、膝関節外科、再生医療、スポーツ医学を学び、神戸大学病院、新須磨病院勤務を経て、患者さんにやさしく分かりやすい医療を提供することを目的に、かわかみ整形外科クリニック（神戸市）を開業。日本整形外科学会専門医。

https://kawakamiseikei.jp/