身体の不調を感じている男性の方、その原因は単なる加齢ではなく「男性更年期障害（LOH症候群）」の可能性があります。

男性更年期障害は生活習慣病に繋がるリスクもあるため、正しい知識を身につけ、適切に対処することが大切です。

この記事では医師の監修のもと、男性の更年期障害における症状や原因、改善のために取り組めることなどをわかりやすく解説します。

「近ごろ身体の調子が良くない」「なぜだかすごく汗が出る」という男性の方、あるいは「夫が男性更年期障害かもしれない」という女性の方は、ぜひご覧ください。

男性に起こる更年期障害の基本情報

更年期障害とは、「40歳代以降の男女の性ホルモン分泌量の低下が原因となる自律神経失調症に似た症候群（※）」のことです。

性ホルモンの減少によって起こるさまざまな体調不良や、情緒不安定などの症状をまとめて更年期障害と呼びます。

なかでも男性に起こる更年期障害は正式な呼び方を「加齢男性性腺機能低下症」といい、女性の更年期障害とは症状が異なります。

男性にも更年期障害があることはあまり知られていないことから、自分では気づきにくく、周りの人からつらさをわかってもらえないケースも少なくありません。

（※）引用：厚生労働省 e-ヘルスネット「更年期障害（こうねんきしょうがい）」

男性更年期障害の症状

男性更年期障害になると、「自律神経失調症（じりつしんけいしっちょうしょう）」と似た症状があらわれます。

自律神経失調症とは、自律神経の乱れによって身体に生じる、さまざまな不調の総称です。

その具体的な症状として、不眠・倦怠感・めまい・動悸・息切れ・イライラ・情緒不安定などが挙げられます。

男性特有の症状として、勃起不全（ED）があらわれることもあります。

男性は女性に比べて更年期障害の症状の進行が緩やかで、気づきにくいとされているところも特徴です。

男性更年期障害になる原因とメカニズム

男性の場合、男性ホルモン「テストステロン」の分泌量の減少が、更年期障害の主な原因とされています。

テストステロンは筋肉や骨の成長を促したり、性機能を正常に保ったり、思考力や認知機能を働かせたりなど、健康の維持において大きな役割をもつ物質です。

テストステロンの分泌量は30歳以降から緩やかに減少し始め、40歳代以降に男性更年期障害の症状があらわれることがあります。

また、加齢のほか、ストレスによってもテストステロンの分泌量が減少するとされています。

テストステロンは身体的にも精神的にも重要な役割を担っているため、減少するとさまざまな不調が引き起こされることを覚えておきましょう。

男性更年期障害のセルフチェック方法

男性更年期障害であるかを自分で判断する方法として、「ハイネマンのAMSスコア」と呼ばれる質問票があります。

症状が気になる方は、医療機関を受診する前の大まかな目安として、ハイネマンのAMSスコアでセルフチェックしてみましょう。

17個の質問に対して自分の症状に当てはまるものを選び、ポイントを足してゆき、合計したポイントにより男性更年期障害のおおよその程度がわかります。

AMSスコア

【合計ポイント】

17～26点：男性更年期障害の可能性は低い
27～36点：軽度の男性更年期障害の可能性あり
37～49点：中等度の男性更年期障害の可能性あり
50点以上：重度の男性更年期障害の可能性あり

ハイネマンのAMSスコアは、あくまで目安として使いましょう。

合計ポイントが高い方はもちろん、低い方であっても、気になる症状がある場合は医療機関の受診をおすすめします。

男性更年期障害に終わりのサインはある？

男性更年期障害のサイン

結論として、男性更年期障害にはっきりとした終わりのサインはないとされています。

女性の更年期障害の場合は、ホルモンバランスが落ち着くにしたがって症状も和らぐことが多く、閉経後５年ほどでおさまっていく傾向があります。

一方で男性の場合は、女性の閉経のように大きな変化点がないこともあり、終わる時期がはっきりとしていません。

治療をせず、自然と終わることはないともいわれています。

テストステロンの減少が病気を引き起こすことも

テストステロンには臓器の機能を正常に保つ役割があるため、分泌量が減少すると、なんらかの病気へと繋がる可能性があります。

直接的な症状とは別に引き起こされる可能性が高まるとされているのが、肥満・糖尿病・高血圧といった生活習慣病です。

これら生活習慣病のほか、心筋梗塞・狭心症・脳卒中など、重大な病気へと繋がる可能性もあるとされるため、よく注意しなくてはなりません。

さらに、テストステロンの減少が認知機能を低下させることで、認知症のリスクが高まることも指摘されています。

男性更年期障害で医療機関を受診する方法

男性更年期障害の症状について相談したい場合、男性更年期障害の専門外来がある医療機関の受診を検討しましょう。

身近にそのような病院がない場合は、泌尿器科や心療内科など、症状によって受診すべき科が異なります。

何科を受診すべきか判断できない場合は、かかりつけ医に相談するのも良いでしょう。

医療機関においては男性ホルモンの量を調べ、その結果をもとに治療法を決めるのが一般的です。

テストステロンの低下を防ぐ方法

テストステロンの低下を防ぐ

テストステロンの低下を防ぎつつ分泌を促すためには、生活習慣の改善に取り組むことが大切です。

以下に挙げる、普段から気軽に取り組める方法をぜひお試しください。

テストステロンを増やす食べ物を積極的に摂る

テストステロンを作るには、アミノ酸を豊富に含む食品の摂取が有効です。

テストステロンを増やすのに効果的とされている食品の例として、以下のものがあります。

ニンニク
玉ねぎ
スイカ
瓜
ラム肉

これらの食品を積極的に取り入れながら、栄養バランスの良い食事を心掛けましょう。

適度な運動で筋肉量を増やす

テストステロンは、運動により増加することがわかっています。

普段からよく歩いたり、筋力トレーニングを取り入れたりと、適度な運動を心掛けましょう。

テストステロンの分泌量は社会活動とも密接に関わることから、野球やサッカーなどのチームスポーツに参加するのも理想的です。

競争意識をもったり、勝利する喜びを感じたりすることも、テストステロンの増加に役立つとされています。

睡眠の質を改善する

テストステロンは睡眠中に多く分泌されます。

睡眠不足はテストステロンの減少を引き起こすため、毎日十分な睡眠をとりましょう。

なお、ただ寝れば良いわけではなく、睡眠の質を高めることも大切です。

寝る前のスマホ操作など、睡眠の質を低下させる行動をしないように気をつけましょう。

ストレスを溜めないように心掛ける

できるだけストレスを溜めずに日々の生活を送るよう心掛けましょう。

精神的なストレスは、テストステロンの分泌量を減少させる主な原因として知られています。

ストレスの解消には、日常生活のなかに運動や趣味の時間を確保したり、ゆっくりと入浴をしたりすることが効果的です。

自分なりのストレス解消法を見つけて、普段の生活のなかに取り入れましょう。

まとめ

男性の更年期障害は、加齢やストレス、生活習慣の乱れなどを原因とした、テストステロンの減少によって引き起こされます。

もし症状が気になる場合には、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。

加えて、テストステロンの低下を招かないよう、普段の生活の改善に取り組むことも重要です。

入浴や運動によるストレス解消のように、まずは取り組みやすいことからはじめてみてはいかがでしょうか。

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【監修者情報】

室宮先生

室宮泰人(むろみや　やすと)

医療法人社団きんせい湯理事長

神楽坂泌尿器科クリニック院長

東京女子医科大学病院　泌尿器科　非常勤講師

東京女子医科大学腎臓病総合医療センター泌尿器科で臨床経験を積んだ後、2020年より神楽坂泌尿器科クリニックを開院。

女医による女性の患者様専用の時間を作るなど、誰でも気軽に受診できる泌尿器科をモットーに診療に当たっている。

専門分野は排尿障害(過活動膀胱、前立腺肥大症)、尿管結石、男性更年期障害、性感染症

https://www.kagurazaka-urology.com/