「急にお腹が痛くなる」「下痢になりやすい」「よくおならを我慢している」このような悩みをもつ方は、過敏性腸症候群の可能性があります。

過敏性腸症候群になると、症状が急にやってくる不安と戦わなければなりません。

周囲に症状を伝えるのが難しく、つらさを理解してもらえないこともあるため、大変な思いをすることも少なくないでしょう。

この記事では過敏性腸症候群について、症状や原因、対策方法などを解説するとともに、自分が過敏性腸症候群であるかをチェックする方法も紹介します。

症状について詳しく知りたい方や、医療機関の受診を検討している方はぜひご覧ください。

過敏性腸症候群とは？基本情報を解説

過敏性腸症候群とは「腸が精神的ストレスや自律神経失調などの原因で刺激に対して過敏な状態になり、便通異常を起こす病気（※）」のことです。

別名「IBS（Irritable Bowel Syndrome）」とも呼ばれています。

通常の検査において、腸に炎症や潰瘍などの異常が見られないにも関わらず、慢性的に腹部の不調を感じるところが特徴です。

数ヶ月以上にわたって長期的に続くこともありますが、命に関わるような深刻な病気ではないとされています。

過敏性腸症候群になると症状自体がつらく感じられるだけでなく、生活の質（QOL：Quality of Life）にも悪い影響を及ぼしかねません。

「ただの腹痛」と放置せず、正しい知識を身につけて、適切な対応をする必要があります。

（※）引用：厚生労働省 e-ヘルスネット「過敏性腸症候群（かびんせいちょうしょうこうぐん）」

過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群は、便秘の症状が強く出る方や下痢を頻繁に起こす方など、さまざまなタイプがあり、一般的に「便秘型」「下痢型」「混合型」「分類不能型」の4つのタイプに分けられます。

タイプ別過敏性腸症候群の症状

該当するタイプによって病院での処置の仕方が変わるため、どのタイプに似た症状があらわれているのか、普段の生活を振りかえってみましょう。

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群となる明確な原因は、実は今もわかっていません。

腸の内臓神経が、何らかの原因により過敏になることで引き起こされると考えられているようです。

過敏性腸症候群を引き起こす可能性があるものとして、以下のものが挙げられます。

精神的ストレス
暴飲暴食
過度の飲酒
不規則な生活
自律神経失調症（じりつしんけいしっちょうしょう）

つらい症状を改善させるには、まずは原因を把握して、状況に適した方法で対処する必要があります。

気になる症状があるなら無理せず、医療機関の受診を検討しましょう。

過敏性腸症候群のセルフチェック方法

過敏性腸症候群かどうかを診断する方法として、「IBSの診断基準（ローマⅣ基準）」があります。

これは2016年にローマⅢ基準から更新された、新しい診断基準です。

医療機関を受診する前に、自分の症状を整理するために活用できます。

IBSの診断基準（ローマⅣ基準）

ただし、個人の状況によって診断が異なる場合もあるため、上記のセルフチェックはあくまで参考として捉えるようにしてください。

自分で症状や原因を判断せず、病院で診察してもらうことが大切です。

過敏性腸症候群を疑う場合には、以下で解説する「医療機関の受診方法」を参考に、受診する病院選びからはじめましょう。

医療機関の受診方法

過敏性腸症候群を疑う症状がある場合の受診先は、消化器内科や胃腸科が主となります。

かかりつけ医がいる場合は、まずそちらを受診しても良いでしょう。

医療機関では必要に応じて問診や検査が行われます。

検査の内容は状況によって異なりますが、血液検査や尿検査などを行い、重篤な疾患がないか調べることが多いようです。

ストレスと密接に関係する病気のため、精神科や心療内科の受診をすすめられる可能性もあります。

自律神経失調症が疑われる場合も同様です。

過敏性腸症候群の改善のために取り組めること

腹部の不調が長期間続く場合や、気になる点がある場合は、まずは医療機関を受診しましょう。

その上で、普段から自分で取り組める改善方法を解説します。

食生活の改善

日頃から暴飲暴食を避け、規則正しい食生活を送ることが大切です。

１日３食、決まった時間に栄養のバランスが整った食事を摂るように心掛けましょう。

これは過敏性腸症候群の原因のひとつとされる、自律神経失調症を予防するためにも重要なことです。

「高FODMAP（フォドマップ）食品」に該当する食べ物を控える

過敏性腸症候群に関連する言葉として「FODMAP」があります。

これは下痢や腹痛などの症状を引き起こしやすい食品の特徴をあらわすものです。

私たちが普段から口にしている食べ物には「低FODMAP食」と「高FODMAP食」に該当するものがあります。

高FODMAP食にあたる食べ物はお腹の不調を引き起こしやすいところが特徴で、低FODMAP食にあたる食べ物に切り替えることにより、改善が期待できるとされています。

高FODMAP（フォドマップ）食品

ただし、過敏性腸症候群だと自己判断して低FODMAP食への切り替えを始めることは、栄養バランスの極端な偏りなどでかえって健康を害する恐れがあります。

まずは診断を受け、医師と相談して行いましょう。

ストレスを溜めない・解消する

過敏性腸症候群はストレスと深い関係があるとされているため、ストレスを解消することで症状の改善が期待できます。

適度に休憩をとる、音楽を聴く、趣味に取り組むなど、自分なりのストレス解消法を実践しましょう。

さらに、自分がどのような状況でストレスを感じやすいかを考えてみると、ストレスを予知し、回避しやすくなるかもしれません。

適度な運動を取り入れる善

日頃から運動をすることで、症状の軽減が期待できます。

特に便秘で悩んでいる方の場合、運動により腸の活動が促され、症状が軽減することもあります。

散歩やジョギングなどの無理なく継続できる運動を、普段の生活に取り入れましょう。

運動はストレスの解消にも効果的です。

生活習慣病の予防や、健康的な身体の維持においても、適度な運動が推奨されています。

生活習慣の改善に取り組む

理想的かつ、規則正しい生活習慣を心掛けることも大切です。

今日から取り組めることとして、毎日十分な睡眠をとる、決まった時間に寝たり起きたりする、寝る前のスマホ操作を控えるなどがあります。

まずは普段の自分の生活を振り返り、改善すべき点がないか考えてみてください。

生活のリズムを整えた上で、先述した食生活の改善やストレスの解消、適度な運動にも取り組みましょう。

市販薬の常備など、日頃から心掛けたいこと

市販薬

過敏性腸症候群は、急に腹痛や便意をもよおしたり、おならが出たりする場合があります。

そんな「もしも」のときに困らないよう、生活の改善に加えて、日頃から備えることも大事です。

急に症状があらわれても対処できるよう、普段から以下の点を心掛けると良いでしょう。

症状に対応した薬を常備する
外出先ではトイレの場所（できれば２ヶ所以上）を把握しておく
お腹を冷やさないように注意する
周りの人に症状のことを伝えておく

薬はかならず、医師の診断を受けた上で使用しましょう。

過敏性腸症候群の症状改善のための市販薬もありますが、これを使用するのは、すでに医師から過敏性腸症候群と診断されていることが前提です。

診断後に市販薬を用いたい場合は、市販薬を取り扱っているドラッグストアにいる薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。

また、自分ではどうしようもないときに周りのサポートが得られるよう、近しい人に症状を伝えて理解してもらうのが理想的です。

こうして日頃から備えておくことで不安材料が減り、ストレスの軽減にも繋がります。

まとめ

過敏性腸症候群は、急な腹痛や下痢などを引き起こす厄介なものです。

まずは医師の診断を受けて、適切な治療を受ける必要があります。

その上で、ストレスの解消、食事の改善、市販薬の常備など、自分でできる範囲の対策にも取り組みましょう。

スギ薬局では、日ごろの対策をサポートする商品を数多く取り揃えています。

医師の診断を受けた上で市販薬を購入する場合は、店舗にいる薬剤師や登録販売者にご相談ください。

そしてスギ薬局で買い物をする場合は、事前に「スギ薬局アプリ」をダウンロードしておくことをおすすめします。

マイ店舗の登録や薬剤師との相談などが簡単にできる、便利なアプリです。

スギ薬局アプリを活用して、できることから少しずつ実践し、症状の改善や予防に取り組んでいきましょう。

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【監修者情報】

小林正弥

小林正弥（こばやし・まさや）

神戸大学医学部卒業。

消化器内科医として総合病院で研鑽を積み、消化器病学会専門医、消化器内視鏡学会専門医を取得。

兵庫医科大学助教として早期食道がん、胃がん、大腸がんの内視鏡治療や抗がん剤治療を行なう一方で臨床研究も手がけ論文発表や学会発表を数多く行なってきた。

2021年菊名内科内視鏡クリニックを開業。

内視鏡検査、治療に加え、地域住民の生活習慣病の治療、健康啓蒙活動にも従事している。

これまでテレビ等のメディアでの発信や書籍での活動も幅広く行なっている。